宇都宮 基師(うつのみや もとし)
昭和14年9月27日、愛媛県八幡浜市生まれ。八幡浜高校から立教大学へ進学。卒業後、南海放送へアナウンサーとして入社。退職後、フリーアナウンサーとしてラジオ生番組や競輪実況中継等を経て、現在『瀬戸風バンク応援隊長』としてCS番組に出演するほか、初心者の女性を対象に分かりやすく競輪を教える『競輪コンシェルジュ』として活躍中。競輪歴○十年!! 
血液型:A型、モットー『楽しく生きる』、趣味『ケイリンの他にゴルフと公園の清掃』

第2回『競輪にどっぷり編』

 皆さん、ご無沙汰しております。『瀬戸風バンク応援隊長』の『よもだ』の“もっくん”です。

 なになに?『よもだ』の意味が分からないって?そうでしょ、そうでしょ。『よもだ』っていうのは愛媛の方言で、『いい加減で、ふざけていて、だらしない人』というあまり良くない意味のほか、『ユーモアや遊び心があり、物事を四方(よも)から多面的に見れる人。また何事にもほどよい加減で、コミュニケーションが上手な人』っていう良い意味もあるんです。愛媛ではそんな、しょうがないけど何だか憎めない、一風変わった人のことを、親しみを込めてそう呼ぶんですね。実はもっくんも『よもだ』なんです、ここだけの話(笑)。

 さて今回は、競輪の魅力や思い出の選手、好きな選手などについて、よもよもお話したいと思います。

人間臭さに魅せられて

 僕が競輪に病みつきになった理由の一つは、ゴール前の迫力に取り付かれたことなんです。一列で走っとった選手が最後のゴール前では横一線になるのが不思議で、誰がどうやってゴールしたのか分かんないその一瞬のゴール前の迫力といったものが、競輪の醍醐味・魅力というふうに感じています。

 公営ギャンブルには、他に競馬とかモーターボートとかありますけど、競馬の場合は馬が走って、騎手の良し悪しっていうのもあるんですけど、基本的には馬の能力でしょうし、モーターボートはエンジンとかモーターの良し悪しとかっていうのがあるでしょう。

 ところが、競輪の場合はもう自転車を踏むのは人間ですからねぇ。その人間の力がすべて表現されるみたいな、そういうところが他のギャンブルにはない、僕にとっては魅力です。人間対人間の駆け引きもありますし、もちろん展開もありますし、選手の心情というか、気持ちというか、精神的なもんとか、体力的な面とか、潜在能力とか脚力とか…いろんな人間の要素を表現できるスポーツだと思っています。一番なんていうか人間臭いもんだなと…だから逆に腹立つこともあるけども(笑)。

 だから、例えば競馬だったら、まぁ負けても相手が馬だから仕方ない、あるいはモーターボートだったら、エンジンが悪いからしょうがないかなぁと。ところが競輪の場合はすべて人間だから、逆にやる気のない選手とか、ホントは先行できるのにズルズル先行できなかったりすると、何やっとんみたいなことになったりして(笑)。人間臭いのがやっぱり競輪は一番面白い。そこが競輪の魅力かなぁと思います。

今まで競輪で2度涙しました

 これまでで思い出に残っている選手というのは、一つ挙げるのは難しいんですが、高倉登とか、高原永伍、白鳥伸雄とかですね。もうちょっと後になると、御三家といわれたんですけど、田中博、福島正幸、阿部道ですね。その後、やはり中野浩一、井上茂徳…。やっぱり中野選手っていうのは、すごい選手だったなぁと今でも思いますね。松山でも記念競輪だったと思うんですけど、最終バック8番手くらいで、3コーナーぐらいからドーンと捲って、後ろをちぎって、優勝したのがすごかった。

 地元の選手でいうと、やはり印象に残ってるのは伊藤豊明選手。デビューして間がなかったと思うんですが、その当時に競馬でハイセイコーっていう、ファンにめちゃくちゃ愛された強い馬がいましたけど、その競輪界のハイセイコーっていわれた岩崎誠一っていう青森の選手がいたんです。その選手が松山に来て伊藤選手と一緒に走った時に、伊藤選手が岩崎選手を競りでドーンと、それこそフェンスぐらいまで飛ばして勝ったことがあるんですけどね。このレースはいまだに忘れられないですね。その後、伊藤選手はご存じのように全国に名を馳せて、特別競輪を二つも三つも取る選手になったんですけど。あのガッツにこれぞ競輪選手という気概を見ました。この間伊藤さんと話した時にその話をしたら、本人もやっぱり憶えてましてね。僕もあのレースは思い出というか、記憶に薄れないですね。

 ところで、こんな僕でもこれまで競輪で2度涙を流したことがあるんですよ(笑)。

 一つはこの瀬戸風バンクに移る前、堀之内の旧競輪場での最後のレース。僕にとっても堀之内で最後の中継レースだったんですが、決勝戦で今の愛媛支部長の梶應弘樹選手が、先行選手の番手から抜け出して優勝したんですよ。僕は地元の選手を大事にしたいし、好きなので、あのレースも忘れられない。自分でもゴール前で何しゃべったか分からんですけど、後でビデオを見たら「カジオッー、カジオッー、カジオッー」って叫んでましたよ(笑)。

 もう一つは瀬戸風バンクでの伊藤豊明選手の引退レースですね。優勝はできませんでしたけど、決勝戦に乗ってね、6番車で。あの最後のレースはやっぱり伊藤さんとのいろんな思い出、デビューした時から懇意にしていただいて、お付き合いもありましたから、ちょっと胸が詰まって、涙が出ましたねぇ。僕、競輪してて、笑ったり、怒ったりすることはよくありますけど(笑)、涙が出たのはこの2回だけですね。それだけ感極まったんです。

自分の持ち味を常に発揮できる選手が好き

 競輪っていうのは、タイムを競う競技でもないし、それぞれのコースがあってよーいドンでゴール目指すんじゃなくて、バンクで駆け引きしながら競うわけですよね。先行タイプとかマーク選手、自在型、捲りタイプの選手とかいろいろありますけど、やっぱり選手は自分の脚質を徹底してアピールするということが大切だと思います。自分の持ち味をそのレースでいつも最大限発揮しようとしてる選手が僕は好きなんですよ。自分の持ってる力をそのレースで100%出す、力一杯出す。力一杯やるだけやって負けたら、自分が車券を買ってても、あっよくやったという気持ちになれるんですけどね。

 また、競り選手も好きなんですよ。競輪の醍醐味の一つに競りがあると思うんですね。強い先行選手の後ろへ飛び付いていく、そのラインを崩すっていうのが、僕は好きなんですよ。並んだまま入るっていうのは僕は競輪やないと思っとるんですよ。だから並んだままの車券はほとんど買いません(笑)。この選手がひょっとしたら競りに行くんじゃないかとか推理したり。あるいは一発脚を溜めて捲る選手とか、先行選手なんかも実は好きなんですよ。一番前を走る姿っていうのはなんていうか潔いですよね。また、一発脚を溜めて一番後ろからでも4コーナーで8番手ぐらいからゴール前で突っ込んでくる選手っちゅうのはかっこいいなぁと思いますね。だから車券的にはねぇ、捲り選手を結構中心に買うことが多いんですよ(笑)。

 逆にこれは駄目だなと思うのは、例えば叩かれるとズルズルーッと下がってしまってもうやる気がないような走り方をする選手。もし叩かれても9着にならないで、8着・7着・6着までなんかこう頑張ろうというような選手がいいと思うんですけどね。あるいは、位置がないのになんにもしないで追走する選手とかね。位置がないんなら、その先行選手のところへ競りこんでイケやーっと(笑)。あなたの持ち味は出ないんじゃないですかっ?と言いたくなるような、そういうような走りをする選手っていうのが、あんまり好きじゃないですねぇ。だから自分の持ち味を、あるいは特徴を、脚質を含めて、やっぱりお客さん一人ひとりに車券を買っていただいているわけですから、力一杯自分の持ってる力をそのレースに表現するっていうかねぇ、そうするとファンも納得するというか、あそこまでやって負けたらしょうがないなという気持ちになりますよね。